自然排煙方式の場合の排煙量算定について
6.排煙量Eの算定式
各個別の排煙量eを算定する式は次のようになっています。
As 当該防煙区画に設けられ各有効開口部(当該有効開口部の開放に伴い開放される当該防煙区画にある有効開口部のうち当該有効開口部からの距離が30m以内に限る。)の開口面積(m2)
hs 当該防煙区画に設けられた各有効開口部の上端と下端の垂直距離(m)
Hc 当該防煙区画に設けられた各有効開口部の中心の基準点からの平均高さ(m)
Hlim 基準点からの限界煙層高さ(居室及び階の出口を有する室の場合は1.8m)(m)
Aa 当該居室に設けられた各給気口(当該有効開口部の開放に伴い開放される当該居室内にある給気口に限る)の開口面積(m2)
式は左辺と右辺に分かれており、計算した数値で大きいものが個別の排煙量eとして採用されることになります。左辺は「給気口」となる開口が無い場合、右辺は「給気口」が設けられている場合の計算式になります。
給気部分の面積が小さい場合には左辺、給気部分の面積が大きくなってくると右辺の式が採用される傾向にあるようです。
それでは一つ一つ項目を見ていきます。
(1)As 計算を行う排煙窓の排煙に有効な部分の面積(As)です。排煙に有効な部分とは限界煙層高さ(Hlim)より上の部分になります。Hlimが排煙窓の境界にある場合はHlimより上の部分のみAs対象の面積とみなします。
左辺は「As」、右辺は「ΣAs」という表記になっています。「As」の定義に明確な区別はありませんが、「As」は現在計算中を行っている排煙窓のみ、「ΣAs」は同時開放、かつ30m以内の排煙窓を含めた排煙に有効な面積だと思われます。そして、「ΣAs」は前述の「計算グループ」によって変化する可能性のある項目なので注意が必要です。
(2)hs 排煙量を算定する排煙窓の高さになります。ただし、純粋に建具寸法としての高さではありません。定義に「有効開口部」とあるので排煙窓が限界煙層高さHlimの境界に配置されている場合は、そこから上の部分の高さになります。
(3)Hc 床面の最も高い位置から排煙窓の中心位置までの高さです。「有効開口部」部分での「排煙窓の中心位置」とされていますので排煙窓が限界煙層高さ(Hlim)の境界部分にある場合はHlimより上の部分での中心位置になります。
また、定義に「平均高さ」とあるのでHcは単独でなく複数であることが見て取れます。その平均値を算定する対象の有効開口部は「同防煙区画」のみが条件となっています。つまり、同じ防煙区画に配置されたHlimより上の部分の排煙窓の全てがHcの算定対象となります。なお、Hcの算定はと同様、面積按分で算定を行います。
(4)Hlim 基準点からの限界煙層高さ(居室及び階の出口を有する室の場合は1.8m)(m)
居室単位の検証を行っているなら1.8m、階・全館検証なら建具の寸法や性能などによって定まる数値になります。
(5)Aa 給気口の面積です。「給気口」といっても構造的には排煙窓と同じもので単に限界煙層高さHlimより下の部分にあるものがその対象となります。そして、他の項目と異なり定義が「当該居室に設けられた」とありますので他の防煙区画にある排煙窓であっても計算を行う排煙窓と同時に開放するならその面積算定対象となり得ることになります。
以上、排煙量の算定の流れでした。全ての条件を説明すると相当複雑なものとなりますが、「防煙区画はされていない」「排煙窓は一つ、もしくは同じ寸法のものが複数」「全て同時に開放しそれぞれが30m以内」であるなら場合分け等は発生しませんので排煙量の算定はそれほど難しいものではありません。しかし、「防煙区画がある」「異なる寸法の排煙窓が複数ある」「個別に開放するものがある」「30m離れた位置に排煙窓がある」と排煙量の算定には相当複雑にあるという覚悟が必要かもしれません。