関連する法律・条例 告示編
建設省告示1441号(国土交通省告示 704号)第3(その3)
居室の出口の通過に要する時間(tqueue)の算定式は次のようになっています。
分子部分(計算対象の人数算定)については「関連する法律・条例 告示1441号第3(その1)」をご覧ください。
分母部分の「Neff(有効流動係数)」の算定については「関連する法律・条例 告示1441号第3(その2)」をご覧ください。
ここでは「出口の1分あたり通過可能人数」を算定する際に必要な「Beff」の解説を行います。
「避難に有効な幅」は正式には「有効出口幅(Beff)」と呼ばれており、告示代1441号第3の第3項で算定方法が示されています。
の場合 | |
の場合 |
まず、「treach」は「在室者が当該居室の出口の一に至る時間」とされおり、次の計算式で求めます。
そのtreachと比較しているのが という計算式になっています。この計算式について告示や『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』の解説部分には特に名称が付けられていませんが、『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』の適用例紹介部分のP197で「火災拡大時間」という言葉が用いられています。
居室単位の検証では火災の発生場所を扉の近くと想定しています。扉が複数ある場合は幅が最大のもの近くで発生するものします。
もし、火災が扉の通過に支障をきたす以前に避難者が扉に到達できれば(treach≦火災拡大時間)、有効出口幅はと扉の幅全体が使用可能(Beff=Broom)になります。
避難者が扉に到達する前に火災が拡大(treach>火災拡大時間)し、扉幅全体が使用できない場合は次の計算式で有効出口幅Beffの算定を行います。
「αf」は「積載可燃物の1m2当たりの発熱量に応じて定まる値(積載可燃物の火災成長率)」と定義されており、次の計算式から数値を決定します。
「ql」は「単位面積当たりの積載可燃物の発熱量」で第5項にて用途ごとにその数値が示されています。
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この表だけで判断できない場合は『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』P57に「告示規定の用途に類する室用途の例」が記載されているので参考にして室のqlを決定します。
号 | 室の種類 |
(一) | 住宅の居室 |
住宅以外の建築物における寝室又は病室とは、専ら就寝することを目的とした室で、住宅の居室に比べて可燃物量が少ない室を指し、例えば宿泊施設の客室、事務所ビルの宿直室などが該当する。 | |
(二) | 事務室に類する用途としては、学校の職員室、準備室、器具庫などがある。 |
会議室に類する用途の特徴は、使用時のみに可燃物が持ち込まれ、常時はいくつかの家具だけが設置されている状況の室である。 | |
(三) | 体育館のアリーナは、通常は収納可燃物が極めて少ない空間で、屋内球技場のフィールドや屋内プールなどが該当する。 |
(四) | 家具又は書籍売場は、常に大量の収納可燃物が存在するもの。住宅・事務所が主用途の建築物の収納室、ホテルのリネン室、劇場等の大道具室、学校の図書室、パチンコ・ゲームセンターなど。 |
飲食室のうち、簡易な食堂に類することができるものとしては、喫茶コーナー等で物販店舗に併設するものや社員専用食堂など本格的な飲食店舗ではないものが該当する。 | |
その他の飲食室とは、一般の営業用の飲食室であり、料理店、ホテルの宴会室などが含まれる。 | |
(五) | 体育館観覧席やディスコなどの客席部分は、劇場等の客席に類するものとして扱う。 |
(七) | 玄関ホール、ロビーその他これらに類するものには2種類あり、待ち合わせ場所や簡易なイベントを行なうためソファ、机などの若干の可燃物が置かれる可能性があるもの(160)と、廊下や階段室のように可燃物を置くことが想定されないものとに区別する。 |
(八) | 給湯室、昇降機の昇降路などが含まれる。 |
(十) | ここでいう倉庫とは、専ら物品の保管を目的とした室で、倉庫一般の他、物販店舗のバックヤードやストックヤードと呼ばれる部分はここに該当する。 |
「αm」は「当該居室の壁(床からの高さが1.2メートル以下の部分を除く。)」及天井(天井がない場合にあっては屋根)の室内に面する部分(廻り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げの種類に応じて次の表に掲げる数値」とされており、その表は次のものになります。
不燃材料でした仕上げ | 0.0035 |
令第128条の5第1項第二号に掲げる仕上げ | 0.014 |
令第128条の5第1項第一号に掲げる仕上げ | 0.056 |
木材その他これに類する材料でした仕上げ | 0.35 |
以上の項目からBeffの算定を行います。場合によっては有効出口幅が0となることもあり、その際は扉の追加等の対応が必要になります。
ここまでで居室の出口の通過に要する時間(tqueue)の算定に必要な項目が揃いましたので、それぞれの数値を当てはめ、tqueueの計算を行います。