関連する法律・条例 告示編
建設省告示1441号(国土交通省告示 704号)第4
平成12年建設省告示第1441号(階避難安全検証法に関する算出方法を定める件)の第4は 居室単位の検証で煙が降下してくる時間の算定方法を示した部分です。
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第4
令第129条第3項第二号に規定する当該居室において発生した火災により生じた煙又はガスが避難上支障のある高さまで降下するために要する時間は、次の式によって計算するものとする。
この式において、ts、Aroom、Hroom、Vs 及び Ve は、それぞれ次の数値を表すものとする。
ts | 当該居室において発生した火災により生じた煙又はガスが避難上支障のある高さまで降下するために要する時間 (単位 分) |
Aroom | 当該居室の床面積 (単位 m2) |
Hroom | 当該居室の床面の最も高い位置 (以下「基準点」という。) からの平均天井高さ (単位 m) |
Vs | 煙等発生量 (単位 m3/分) |
Ve | 有効排煙量 (単位 m3/分) |
2 前項の煙等発生量は、次の式によって計算するものとする。
Vs = 9((af+am)Aroom)1/3(Hlow5/3+(Hlow-Hroom+1.8)5/3)
この式において、Vs、af、am、Aroom、Hlow 及び Hroom はそれぞれ次の数値を表すものとする。
Vs | 煙等発生量 (単位 m3/分) |
af | 第3第3項の表に規定する af の数値 |
am | 第3第3項の表に規定する am の数値 |
Aroom | 当該居室の床面積 (単位 m2) |
Hlow | 当該居室の床面の最も低い位置からの平均天井高さ (単位 m) |
Hroom | 当該居室の基準点からの平均天井高さ (単位 m) |
3 第1項の有効排煙量は、次の各号に掲げる当該居室の区画の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 当該居室の内部が、天井面から 30cm以上 下方に突出した垂れ壁その他これと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、又は覆われたもの (以下「防煙垂れ壁」という。) によって床面積 1,500m2以内 ごとに区画されたもの (防煙垂れ壁の下端の床面からの高さが 1.8m以上 の場合に限る。) 次の式によって計算した数値
Ve = min(A*E)
この式において、Ve、A* 及び E は、それぞれ次の数値を表すものとする。
Ve | 有効排煙量 (単位 m3/分) | |||||||||||||
A* | 防煙垂れ壁で区画された部分 (以下「防煙区画」という。) の壁又は天井に設けられた開口部の床面からの高さが 1.8m以上 の部分 (以下「有効開口部」という。) の上端の位置に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した排煙効果係数 (有効開口部がない場合においては、零 とする。) | |||||||||||||
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この表において、Hst、Hw、A*、Htop、Asc 及び Aroom はそれぞれ次の数値を表すものとする。 | ||||||||||||||
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E | 当該防煙区画に設けられた排煙設備に応じ、それぞれ次に掲げる表の式によって計算した数値 (単位 m2/分) | |||||||||||||
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この表において、As、hs、Aa、Hc、E、w 及び s は、それぞれ次の数値を表すものとする。 | ||||||||||||||
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二 前号に掲げる居室以外の室で床面積が 1,500m2以下 のもの 次の式によって計算した数値
Ve =
この式において、Ve、Hst、Htop 及び E は、それぞれ次の数値を表すものとする。
Ve | 有効排煙量 (単位 m3/分) | |||||||||||||
Hst | 当該居室に設けられた各有効開口部の上端の基準点からの平均高さ (単位 m2) | |||||||||||||
Htop | 当該居室の基準点からの天井高さのうち最大のもの (単位 m) | |||||||||||||
E | 当該居室に設けられた排煙設備に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した数値 (単位 m3/分) | |||||||||||||
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この表において、As、hs、Aa、Hc、E、w 及び s は、それぞれ次の数値を表すものとする。 | ||||||||||||||
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第4は3つの項目に分かれており、それぞれ次のような内容になっています。
項目 | 内容 |
第1項 | 居室の煙が降下してくるまでの時間を算定する計算式の提示 |
第2項 | 居室の煙等が発生する量を算定する計算式の提示 |
第3項 | 居室の排煙量を算定する計算式の提示 |
第1項は煙降下時間を算定する計算式が示されており、その式は次のようになっています。
分子部分は居室内において煙を溜めることが可能な体積の算定、分母部分は1分当たりの煙蓄積量の算定になります。つまり、煙を蓄積可能な部分が何分で満杯になるかどうかを算定した計算式になります。
火災で発生した煙が天井から蓄積し1.8mまで降下する時間が「居室の煙降下時間(ts)」になります。1.8mという数値は「避難上支障のある煙層の高さ」で、これより煙が下がると在室者の避難が困難になるものとされています。そのため、1.8mより上方部分(Hroom-1.8m)が煙を溜めることが可能な部分で、これに室の面積(Aroom)を乗じたものが蓄積可能な部分の体積になります。
「Aroom」は「当該居室の床面積」です。避難時間の算定の「Aarea(当該居室等の各部分ごとの床面積)」と異なり「計算を行っている室のみの面積」になります。
「Hroom」は「当該居室の基準点からの平均天井高さ」です。天井面に高さの異なる部分があれば平均の数値を算定する必要があります。また、床面については最も高い位置を「基準点」とし、Hroomはその「基準点」から平均天井高さまでの数値になります。
したがって、床面に段差がある場合、「Hroom-1.8」の数値が減少することから、蓄煙体積も少なく算定されることになります。また、後述する煙等発生量(Vs)では煙の量も増加する計算式となっていることから床面の段差は不利側の条件に働くことになります。
分母部分のmax(Vs―Ve,0.01)の「Vs」は「煙等発生量」で「Ve」は「有効排煙量」になります。つまり、発生量と排煙量の差し引きした数値が煙の蓄積していく量ということになります。「0.01」は強力な排煙装置を設置した場合、Veの数値がVsを上回り数値がマイナスになることを防ぐために設けられた数値です。そのため、ある程度以上の排煙量からは煙降下時間の延長には効果を発揮しないことがあるので注意してください。
Vs(煙等発生量)の算定式は次のようになっています。
αf(積載可燃物の発熱量の火災成長率)、αm(内装の火災成長率)は避難時間の算定で、Aroom(当該居室の床面積)、Hroom(当該居室の基準点からの平均天井位高さ)は煙降下時間の分子部分で既に出てきました。項目として初めて出てくるのは「Hlow」になります。「Hlow」は「当該居室の床面の最も低い位置からの平均天井高さ(m)」と定義されています。床面に段差が無ければHlow=Hroomになります。
Vsの算定式について『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』P64では次のような説明がなされています。
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第1項のは、火災の大きさ(燃焼の速さ)を表しており、この項が大きいほど煙等発生量は大きくなる。一方第2項のは、火災の熱気流が周囲の空気を巻き込むことにより煙の量が増大する度合いを示している。
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Ve(有効排煙量)の算定については防煙区画の有無、排煙方式の違いにより使用する計算式が異なり相当複雑な内容になっています。そのためここでの説明は割愛します。
自然排煙方式の算定についてはこちらをご覧ください。
避難安全検証法の適用は排煙設備の削減が目的であることが多いため、排煙設備無しの場合での計算が多くなると思います。その場合はVe=0で煙降下時間の算定を行うことになります。