株式会社建築工房グエル

01 物販店舗の倉庫

■新たに加わった適用例
『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』(以下、旧解説書と称します)では実際の計算例を示すためにP193以降に「適用例」として「事務所ビル」、「ホテルの宴会場」、「映画館」の計算方法が示されていました。しかし、実際に避難安全検証法が施行されると適用例の用途の建物より物販店舗や物流施設などの採用が多かったものと思われます【注1】。そのためか『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』(以下、新解説書と称します)では新たに適用例として「物販店舗(P203~)」「物流倉庫(P207~)」が加わっています。

【注1】弊社への依頼案件の傾向から判断しています。

■火災室→屋外の煙降下時間の扱い
旧解説書での適用例はいずれも「居室→廊下(又は付室)→階段(屋外)」と火災室と階段(屋外)との間に「非火災室」が挟まったもので、火災室と非火災室間に防火設備を設置し煙降下時間を稼いで判定をOKにする、ある意味理想的な条件下の検証でした。しかし、実際に避難安全検証法の採用例が多い物販店舗は「売場→階段(屋外)」あるいは「バックヤード→階段(屋外)」と火災室と階段(屋外)との間に非火災室となる空間が無いことがほとんどとなります。
ここで問題となるのが「火災室→階段(屋外)」の煙降下時間の扱いです。 なお、適用例の物販店舗は平屋建てであることから、以下の内容は「火災室→屋外」の扱いに限定します【注2】

「火災室→屋外」の煙降下時間は普通に計算するとほぼ1分以内となります(工場など大規模な空間は数分程度になることはあります)。その一方で、階避難時間では避難開示間の加算時間で物販店舗の場合だと無条件に3分加算することになります。避難安全検証法(時間判定法)では最長の避難時間と最短の煙降下時間を比較し、煙降下時間の方が長ければ判定はOKになりますが、「火災室→屋外」を階煙降下時間の対象とすると煙降下時間を稼ぐ空間が存在しないため、火災室に非現実的に強力な機械排煙でも設置しない限り判定をOKにすることができません。

「火災室→屋外」を階煙降下時間の対象とするかどうかの扱いは告示でも旧解説書でも特に明示されていませんでした。そこで、実際の審査では次のような方法が取られていました。

(1)倉庫(バックヤード)で荷捌きを行うものとして居室扱いとし居室単位の検証を行い、「倉庫→屋外」は階煙降下時間の対象外とする。
→階全体の検証では階煙降下時間は火災室で発生した煙が「他室」に伝播し、屋外まで至る時間であるとし、その対象から外すものと解釈した内容です。「火災室→屋外」を検討から抜けないよう「倉庫(バックヤード)」を居室として、その居室段階の検討で行うという前提になります。

(2)倉庫(バックヤード)の屋外への扉は避難には使用しないものとし、「火災室→屋外」は検討しない
→消防法等で倉庫(バックヤード)に扉を設置せざるを得ない場合や扉を出てから敷地外まで1.5m程度の通路幅を確保できない場合などに用います。この場合、扉は普段施錠しているなどの条件を求められることがあります。また、ゴミ置場など火災室が小規模の場合は避難経路としては利用しないことが明白であるとしてこの考え方を適用することがあります。

(3)「火災室→屋外」は階煙降下時間の対象外とする。
→対象外とすることについて特に条件を付加しない場合です。弊社でこの解釈を提案することはありませんが、他計算書で見受けられたことがあります【注3】

【注2】「火災室→直通階段」はまた別に取り上げる予定です。
【注3】(2)の敷地上の条件だった可能性もあります。

■新解説書での物販店舗の適用例
以上のような背景を踏まえた上で新解説書の適用例に採用された物販店舗における「火災室→屋外」の扱いを確認します。

まず、「売場→屋外」ですがこれは階煙降下時間に含まれていませんでした。
これまでこの考え方ははっきりとした根拠資料が存在しなかったため、解説書の適用例と明示されたことから居室扱いとして検討を行えば「居室→屋外」は階煙降下時間の対象外とできることが明らかとなりました。

次にバックヤードの扱いですが、「バックヤード→屋外」も階煙降下時間に含まれていませんでした。しかも、「バックヤード」は非居室のままです(その後訂正あり、後述します)。

前述の(3)のように特に条件を課さなくても「火災室→屋外」は階煙降下時間から除外できる?
(弊社は新解説書が発行されてから数ヶ月の間、依頼者様へはバックヤードの扱いについて「非居室の場合」と「居室扱いとした場合」の両案を提案していました)

■新解説書の訂正
数カ月後、ある案件の審査時、審査機関から新解説書に訂正が入っていることを知らされました。

正誤表_2023.7.19

その訂正の中に「物販店舗」の適用例があり、「バックヤード」が居室扱いになっていました。在館者密度は0.06 人/㎡、積載可燃物の発熱量は2000MJ/㎡です。
しかし、訂正前の条件では判定がOKにならなかったようで、天井高さがCH2900mmからCH3500mmへ設計変更が入っていました。

訂正というにはかなり大きな考え方の違いのように思います。

ポイント
「居室→屋外」は階煙降下時間決定時の算定対象外にできます。


※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から判断した建築工房グエル独自の判断になります。


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