株式会社建築工房グエル

07 扉の構造

■出口となる扉の条件
避難安全検証法の計算上、出口となる扉は最終的に直通階段や屋外に通じていることが第一条件となります。しかし、構造的な条件については幅が60cm以上であることが『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』(以下、旧解説書と称します)P42に示されている以外は特に明示されていませんでした。

■有効幅
そのため、避難安全検証法の施行からしばらくは扉の全体幅の数値で計算を行ってきました。しかし、施行から数年後、避難時間の計算で出口幅は「扉の有効幅」で行うように指導が出るようになってきました。この有効幅、検証計算の過程上で算出する有効出口幅(Beff)とは異なる数値となります。例えば親子扉や両開き扉の場合、フランス落としで閉鎖されている部分の幅はあらかじめ扉の幅(Broom)から除くというものです。

また、片開き扉の場合でも扉の厚み、引き扉だと引き残し部分を差し引いた部分を有効幅とすることもあります。
一方、煙等伝播量の算定は開口部全体の煙の漏れを考慮することから全体幅で算定することになります。

これら有効幅の考え方は告示や解説書で明示されたものではなく実務的な観点から安全側に配慮した指導といえます。

■新解説書では
このように、これまで扉の構造的なものはあまり明示されたものはありませんでしたが、2023年3月に発行された『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』(以下、新解説書と称します)のP32に「検証法上の出口の扱い【運用】【注1】」という項目が設けられ次に上げる条件が示されました。

1)避難上有効な出口幅
・出口幅は扉の厚さを除いた有効幅(60cm以上のものに限る)
・親子扉などフランス落としで固定されている扉は有効幅に見込むことができない

これらは実務的に採用されていた考え方が反映された結果でしょうか。

2)シートシャッターの取り扱い
・ウォークスルー型シートシャッターのひな開口部は一般に使用する開口部に対して開口部の構造や避難者が開閉する際の動作が異なるため、計算上見込まないなどの配慮が必要。

「一般に使用する開口部」の範囲が不明ですが、シートシャッターのくぐり戸に限らず開き戸や引き戸以外の特殊な開閉方法を伴う出入口は計算上見込むかどうかを審査機関に確認した方がよさそうです。

3)避難経路上に設けられるセキュリティーゲート等の扱い
・セキュリティーゲートや自動扉は火災時に開放可能なものと、かつ通行可能な構造に限り出口として見込むことが可能

火災で電源が喪失しても手動で開放可能であることなども条件として示されています。気になるのは次の一文です。

・①セキュリティーゲート
  有効幅の合計が60cm以上であるもの(セキュリティーゲート単体の有効幅は60cm未満でも良い)。

セキュリティーゲート限定とは思われますが、一つ一つの往来部分が60cmに満たなくても合計で60cm満たせればよい、とあります。この考え方は新解説書P83にある「近接した扉は一つの扉として扱う」に通ずるものがありますが、個々の幅は60m未満でも出口として認められる可能性が出てきました。

【注1】【運用】は新解説書P30から「法的効力はないが、避難安全上配慮すべきこと」とされています。

■近接した扉
近接した扉の扱いについても追記がありました。これまで近接した複数の扉は一つの扉として扱う必要があることが旧解説書P54に記載がありましたが、具体体にどの程度近接していれば一つの扉となるのか数値は明示されていませんでした。

新解説書P83には「目安としては扉間が2m以下の出口は1つの出口とみなす:質疑応答集No28参照」とあります。その質疑応答集No28には「火熱の影響を考慮した有効出口幅の算出式は、扉から1mの距離に火源を置いて定式化されれているので目安としては扉間が2m以下の出口は一つとして扱うことになります」とその理由についても記載が追加されています。

ポイント
出口となる扉の避難に有効な幅や構造について記載の追加がありました。また、近接した扉は2m以下であれば一つの扉として扱うことが明示されました。


※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から判断した建築工房グエル独自の判断になります。

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