株式会社建築工房グエル

04 風除室の扱い

■風除室は1室なのかどうか
風除室の扱いについては『2001年版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』(以下、旧解説書と称します)ではP265質疑応答29に記載があり、「原則として、風除け室も1つの室と扱います」との記載がありました。ただし、質疑も応答も「避難時間」算定の観点からの記述で、「煙降下」時間算定における扱いは不明でした。もし、煙降下時間算定でも1室として扱うと風除室は防火設備での区画が必須となってしまいます。その反面、避難時間の算定でも除室に面する居室が屋外への扉を有していれば質疑応答にある有効流動係数Neffは常に90人/分/mとなるため、風除室の面積は避難時間の算定にはそれほど大きく計算に影響しないことになります。
また、P219適用例の「高層事務所ビル」には「風除室」らしい表現がありますが、ロビーの一部分として扱われています。

■実際には
風除室を1室として扱うとどうしても階煙降下時間の対策のために防火設備での区画が必要となってしまいます。それだと、特に物販店舗の風除室の場合、コスト的な面の他、デザイン的な面からも抵抗があるためか実際には「風除室と店舗の間の扉はパニックオープン(避難時に開放状態を維持)などを設けることで風除室は店舗の一部分とする」とし、防火設備の設置を回避してきました。また、蓄積容積の算定時には風除室部分を除いた面積で算定を行うように指示が出ることもありました。

■新解説書では
2023年3月に発行された『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』(以下、新解説書と称します)は風除室の扱いについて次のような記載の修正、あるいは新たな内容が追記となっています。

□P35 居室に設けられる前室の扱い
この部分は「衛生上または機能上、当該居室に前室を設置する場合」とされ、また、前室も10㎡以下と制限はあるため、ずばり風除室を指したものではありませんが、一定の条件下であれば居室と前室を一体に扱うことが明記されています。その際、煙を溜める部分の面積、蓄積容積の算定では前室部分を除いて計算することが記載されています。

□P202 5.6 物販店舗
新しく追加となった適用例の物販店舗では次のような記載があります。
風除室の自動ドアは火災報知設備の発報に連動して解除され、避難者が手動で開放した後は、開放した状態のままとなっていることから、売場と同一の室として取り扱う
そのため室名も「売場・風除室」となっています。煙降下時間の算定では、煙等発生量(Vs)も蓄積容積の体積も「売場・風除室」全体の面積で算定しています。
なお、風除室部分は在館者密度も積載可燃物の発熱量も売場と同様の数値となっています。

□P288 質疑応答31 【有効流動係数2】風除室の扱い
質疑応答の回答では
風除室は火災室に有効に開けられるようにすることで、風除室手前の室と一体とみなすことができます。なお、屋内側と屋外側で出口幅が異なる場合には小さい方の出口幅とします。
ただし、計算方法に注意が必要で

Aarea  =A1+A2・・・・A1は売場面積、A2は風除室面積
Aroom =A1


と図の右側に記載があります。Aareaは「当該居室等の各部分ごとの床面積」で避難時間算定に用いられます。Aroom(当該居室の床面積)で煙降下時間の算定に用いられます。
つまり、風除室と売場を一体とした場合、避難時間は全体の面積、煙降下時間は蓄積容積に加え煙等発生量(Vs)も風除室部分は除いた面積で算定することになります。

ポイント
条件を満たせば「風除室」とその直前の室を一体として計算してよいことが解説書で明示されました。ただし 、計算方法が記載位置によって異なっているため、風除室の扱いについては審査機関に確認してください。


※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から判断した建築工房グエル独自の判断になります。


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