■避難完了時間の算定方法
ルートB1(煙降下時間判定法)は、避難開始時間(tstart)、歩行時間(ttravel)、出口通過時間(tqueue)の3種類の時間をそれぞれ算定、そのまま合計したものが避難時間(tescape)となりました。
ルートB2(煙高さ判定法)では避難開始時間(tstart)に加算するのは「歩行距離に滞留時歩行速度(vcrowd)を除した時間」【注1】【注2】か、出口滞留時間(tcrowd)の大きい方の数値になります。この大きい方の数値を採用したものが出口通過時間(tpass)となります。
【注1】ルートB1の「travel(歩行時間)」のように歩行時間に対して個別の記号や名称がルートB2では示されていないようです。ここでは「滞留時歩行時間」と称するものとします。
【注2】滞留時歩行速度(vcrowd)はルートB1と同様に各部分の用途ごとに定められた数値ですが、同用途の場合でもルートB1の約半分の速度となっています。
ただし、単にtpass=max(滞留時歩行時間、tcrowd)、つまり、滞留時歩行時間と出口滞留時間を比較し、最大値を採用すればいいのかというと、どうもそういうわけでもなさそうです。
ルートB2では新たに「避難経路」という概念があり、避難者がどの方向へ避難したのかも検証計算に関係するものとなりました。その「避難経路」ごとに出口通過時間(tpass)を算定し、その中での最大値を避難開始時間と合計し避難完了時間(tescape)とします。
つまり、ルートB2の避難完了時間tescape=tstart+max(tpass,1、tpass,2 、tpass,i・・・・)で算定することとなります。これは居室、階・区画とも同じ算定方法です。そして、それらtpass,iごとに滞留時歩行時間と出口滞留時間を比較、長いものを採用していることになります。
最終的な結果としては算定しているものの中で最長の滞留時歩行時間もしくは出口滞留時間(tcrowd)が採用されることに変わりはないのですが、計算途中に「避難経路ごと」の出口通過時間を求めるという過程があることになります。
ルートB2の避難完了時間はtescape=tstart+max(tpass,1、tpass,2 、tpass,i・・・・)で算定する。
tpass,iは避難経路ごとにmax(避難距離÷滞留時歩行速度、tcrowd)で算定した数値。
■出口を追加しても効果がない?
ルートB1でも効果的な位置に扉の追加、もしくは幅の拡張を行わないと避難時間の短縮につながらない場合がありました。それでも、居室の出口もしくは階の出口を単純に追加すれば、だいたいは避難時間を短く算定することができました。
しかし、ルートB2では対策に効果が現れる部分がピンポイント的になっており、最長の「避難経路」に対策を施さないと効果が全く得られないことが発生することになります。また、居室や区画単位の検証の場合では出口から直通階段(又は地上)への避難経路上で「狭い」部分があると単純に扉を追加しただけでは得られる効果が薄いこともあります。この「狭い」部分の対象はルートB1のように扉や階段の幅だけでなく、廊下の幅や階段でも踊り場部分の幅も検証対象となっていることに注意が必要です。
最大tpassでない経路へ対策をしても避難時間の短縮にはつながらない。
避難経路上の扉の他、廊下の幅や階段内の幅、踊り幅も検証計算に影響する。
■加算時間について
ルートB2にはある条件になると出口通過時間(tpass)には計算で算定した以外の数値を加算する場合が発生します。出口通過時間への加算はルートB1にはありませんでした。加算となる条件は出口滞留時間(tcrowd)が一定数値以上となる場合ですが、検証段階よってその条件や加算する数値の算定方法は異なるものとなっています。
居室単位の検証では計算を行っている居室とその居室を通過しないと避難できない部分(当該居室等の部分)がある条件下で区画されているかどうかで加算時間となる条件及び加算時間が変化します。
区画検証では出口滞留時間(tcrowd)が3分以上となると建物全体の階数によって算定された数値を加算します。
階検証の場合はかなり複雑で、まず、階の用途が病院系かどうか、適用階が避難階かどうか、直通階段前に条件を満たす付室があるかどうかで加算する条件が変化します。加算する数値自体は建物全体の階数から定められた計算式で算定した数値となります。
ルートB2には出口通過時間にも加算時間が発生する場合がある。加算するかどうか、加算時間の数値は居室・区画・階で条件や算定方法が異なる。
告示で示されている居室の出口通過時間算定方法
当該居室等の種類 | 居室出口滞留時間 | 居室出口通過時間 |
準耐火構造の壁若しくは準不燃である場材料で造り、若しくは覆われた合壁又は十分間防火設備で区画されたもの | である場合 | |
である場合 | ||
その他のもの | である場合 | |
である場合 |
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。