■検証法・段階の種類の区別
避難安全検証法が施行された当初、各記号には検証法、あるいは検証段階の種類を区別するものがありませんでした。
例えば、は避難開始時間を示す記号ですが、これだけでは居室避難開始時間なのか、階避難開始時間なのか、もしくは全館避難開始時間なのか判別はできませんでした。
2020年の改正時に居室単位の検証にはroom、区画単位の検証にはcomp、階単位の検証にはfloor、全館の検証は記号の付加なし、とそれぞれどの検証段階の数値なのかを記号のみで区別できるようになりました。
例えば避難開始時間では次のようになりました。
避難開始時間の記号 | 検証の種類 |
居室 | |
区画 | |
階 | |
全館 |
積載可燃物の発熱量qlや積載可燃物の火災成長率αfなど検証法の段階に関係なく共通するものについてはこれまで通りで付記された記号はありません。また、排煙量Eなど防煙区画ごとに算定するものに対しては「sc」の記号が付加されているものもあります。
これら新たに付加された記号については検証法の種類・段階を一目で区別できるので認識はしやすくなった反面、記号自体の文字数が増えたため、計算書の書式等についてはみ出しが発生しないか注意を払う面も出てきました。
■ルートB2(煙高さ判定法)の場合の記号
ルートB2(煙高さ判定法)でも検証法の種類・段階によって付加される記号はルートB1(煙降下時間判定法)と同様の考え方になっているようです【注1】。
【注1】避難完了時間を示す記号が示されたのはルートB2の施行からだと思われます。ルートB1の告示ではその記号は示されておらず、『2001年度版 避難安全検証法の解説及び計算例とその解説』の計算例の中でも避難完了時間は「」と示されています。
ただし、ルートB1と異なる意味が付加されている場合がルートB2ではあるようです。
例えば区画単位の検証法における煙層上昇温度は次のようになっています。
記号 | 表す内容(一部略) |
火災室隣接部分の煙層上昇温度(単位度) | |
当該火災室の煙層上昇温度(単位度) |
この場合、「ΔT」は煙層上昇温度、「c」は区画単位の検証を示しているようです。そして、記号の末尾の「comp」は隣接部分、「room」は火災室を示しているものと思われます。
他には次のようなものもあります。
記号 | 表す内容(一部略) |
当該火災室隣接部分に設けられた給気口の開口面積の合計(単位㎡) | |
当該火災室に設けられた給気口の開口面積の合計(単位㎡) |
この場合、「r」が隣接部分、「room」が火災室を示すのでしょうか?
一見、似通った記号であるため見間違えそうですが、それぞれ違う項目であることから数値を算定する方法ももちろん異なります。実務においては見間違いから発生する計算違いに注意を払う必要があるように思います。
ルートB2では計算だけでなく記号も複雑になっています。
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。