■区画単位の検証の避難経路
ルートB2(煙高さ判定法)では避難完了時間(tescape)の算出に「避難経路」ごとに出口通過時間(tpass)の算定を行うという過程があります。
居室単位の検証の避難経路についてはこちらをご覧ください。
区画単位の検証でも避難経路ごとに出口通過時間(tpass)を算定しますが、その算定方法は階単位の検証よりは居室単位の検証に類似したものとなります。
区画単位の検証は居室単位の検証と同様、同じフロア上で避難先の階段(もしくは地上)に至るまでに「検証対象以外の部分」を通過することから計算内容も似通ったものとなっているようです。
したがって区画単位の検証でも居室単位の検証と同じように避難経路ごとに流動量(Rneck)【注1】の算定を次の式から行う必要があります。
「Dco」は避難経路上の廊下の幅の中で最小値、「Rd」は避難経路上の扉【注2】の有効流動量の最小値、「Rst」は階段の有効流動量の最小値になります。そのため、居室・区画単位の検証では検証対象部分以外でも直通階段(もしくは地上)までの避難経路部分の計算も重要な数値となります。
【注1】「有効流動量」はくだけた言い方をすれば「その部分の通過しやすさ」を示した数値だとお考え下さい。数値が大きいほど「通過しやすい」→「通過時間が短くなる」ことにつながります。
【注2】居室や区画の出口、つまり検証対象部分の出口に該当する扉は含まれません。
■区画単位の検証の避難経路の抽出
区画単位の検証においても避難経路ごとに出口通過時間(tpass)の算定を行うことから避難経路を一つ一つ抽出することが必要になります。告示文章では次のように示されています。
「当該区画部分から当該区画部分以外の部分等への出口(幅が60cm未満であるものを除き、当該区画部分から直通階段(当該区画部分が避難階に存する場合にあっては地上)に通ずる主たる廊下その他の通路に通ずる出口に限る。以下同じ。)を経由して直通階段(当該区画部分が避難階に存する場合にあっては地上)に至る各経路(避難の用に供するものであって当該経路上にある各出口の幅が60cm以上であるものに限り、当該室が当該火災室又は当該火災室(居室であるものに限る。)を通らなければ避難することができない部分である場合以外の場合にあっては、当該火災室を経由するものを除く。以下このロにおいて「避難経路」という。)ごとに、区画出口滞留時間に応じ、・・・・」
※読みやすいように一部文字色を変えています。
表現は居室単位の検証のものとほぼ同じようですが、赤文字部分が追加されています。
「場合以外の場合」などの表現があるため、わかりにくくなっていますが、「当該室」が避難開始室、「当該火災室」が避難経路上にある「火災室」であるものとすると、次のように解釈できるかと思います。
「避難開始室から直通階段(もしくは地上)までの経路の中で火災室は通過しないものとする。ただし、火災室を通過しないと避難できない場合においては通過を認める」
その意図は「倉庫」など避難経路としてふさわしくない室はなるべく経由しないようにするための処置なのでしょうか?【注3】
【注3】ここの表現はパブリックコメント募集時に公開された段階ではありませんでした。ただし、出口の「有効流動係数Nd」で「火災室に設けられた出口」の場合にはNd=0、つまり、通過不可の数値が与えられており、火災室の通過はできないような計算となっていました。正式な告示で「火災室に設けられた出口」の項目は無くなっており、火災室の通過もある程度は認めているようになっているようです。
一つ一つの避難経路の区分けですが、区画単位には居室単位のような避難先の面積(Aco)の数値は計算式にありません。それ以外については居室単位と同じ判断になるかと思われます。
■階単位の検証の場合
階単位の検証の避難経路についての告示の表現は区画単位とほぼ同じです。
ただし、階単位の検証では「避難経路の流動量Rneck」はなく、「直通階段の有効流動量Rst」がそのまま避難経路の流動量になります。そのことから階単位の検証の場合は避難経路の区別は直通階段ごとであると言えそうです。
避難階の場合については明確ではありませんが、「直通階段の有効流動量Rst」の算定は不要【注4】になることから避難経路は一つのみと判断できる可能性もあります。一方、屋外への出口を有する室ごとに避難経路を定める可能性があることもいまのところは否定できません。
【注4】避難階の場合は「直通階段の有効流動量Rst」の算定は不要となります。(「建築基準法施行令の一部を改正する政令の施行に伴う避難安全検証法関係告示の制定・改正案に関する意見募集の結果について」より)
一つ一つの避難経路の範囲の決定についてはプランによっては協議が必要になる場合があるものと思われます。
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。