株式会社建築工房グエル

15.ルートB2は天井が低くてもOK【注1】になる?

【注1】今回、他法規等は考慮せず避難安全検証法の告示で示された計算式から導かられる結果のみを記述しています。

■ルートB1は最低限の天井高さが必要
ルートB1(煙降下時間判定法)の居室単位の検証では火災発生から煙が天井面から降下し床面(段差がある場合は最も高い部分)から1.8mの位置に達した時点が煙降下時間になります。

そのため、最低限1.8m以上の天井高さが確保されていないと煙降下時間は0分となります。ただし、煙降下時間の比較対象である避難完了時間が0分となることはないため、1.8mより上の部分はある程度確保する必要があります。実際には検証上で好条件(積載可燃物の発熱量が小さい、内装不燃など)だったとしても天井高さは2.4m程度以上必要にはなってきます。

この「1.8」という数値は「避難上支障がある高さ」とされており、この数値より煙が降下してくると避難ができないとされています。そのことからも1.8mは避難安全検証法上最低限の天井高さとなりますが検証計算の式の中にもこの数値が組み込まれており、居室の天井高さが1.8mより低くなると煙降下時間はマイナス値になってしまいます【注2】

【注2】居室煙降下時間算定式


ルートB1では計算式自体に天井高さの最小値が定められている。

■ルートB2は天井高さ1.8m以下でもOK?
ルートB2(煙高さ判定法)でも「避難上支障のある高さ」は1.8mと告示に明記されているため、避難が完了した時における煙の高さは1.8m以上となることが必要になります。そのため、室の天井位置も1.8m以上が確保されていることは大前提だとは思いますが、計算式のみの判断に限定するとルートB2には計算式の中に天井高さが1.8m以下とならないような回避部分が組み込まれていません。そのため、例え天井高さが0mだとしても計算が成立するような流れとなっています。

例えば居室単位の検証時、居室煙層下端高さの算定式を決定する際、「ΔTr,room≦√500/3tpass(room)」が成立すると、Zroom= 1.8となり、居室判定はOKとなります【注3】

【注3】「Zroom=1.8」は居室の天井高さは1.8m以上あることが前提だとは思われますが・・・。

この計算の流れの場合、天井高さの数値は、「当該居室の煙層上昇温度 ΔTr,room」の算定時に必要となる数値の「当該居室の(基準点からの高さが1.8m以下の部分を除く。)及び天井の室内に面する部分の表面積 Aw」に用いられます。
しかし、Awは1.8mより高い部分の壁+天井の表面積の合計であるため、例え壁の面積が0㎡であっても数値が0やマイナス値になることがなく計算が成立します。実際に計算してみても天井高さが0mとしてもZroom =1.8mとなる場合があるようです。

また、ここでは詳細は延べませんが階・区画単位の検証でも天井高さ0mでOKとなる場合があるようです。


ルートB2では計算式には天井高さの最小値が組み込まれていない。
ただし、告示の本文では「避難上支障のある高さは1.8m」と明記されている。

■設計変更に注意
実際には天井高さが1.8m、ましてや0mとなることはありま得ませんが、ルートB2で設計し天井を低めに設計している場合に注意が必要となるのは設計変更時です。
ルートB2では避難完了時間や出口通過時間などの数値によって煙層下端高さを算定する計算式も異なるものになる可能性があります。そのため、設計変更により煙層下端高さを算定する計算式が天井高さに比重を置かれているものが採用された場合、天井を高くする必要が生じてくる可能性【注4】があります。

【注4】それでもルートB1よりは天井を低くできる傾向にあるようです。

一方でルートB1では小規模の「事務室」では天井をやや高め(3.0~3.5m)程度が必要になっていましたが、このような拘束はルートB2ではなくなることが予想されます。


ルートB2ではルートB1より天井を低くすることが可能と思われます。ただし、設計変更時には注意が必要。

※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。

 

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