■建物階数の影響
ルートB1(煙降下時間判定法)の場合、適用階がどの階なのか、あるいは建物全体の階数については検証計算には影響せず【注1】、計算に影響するのは避難先が直通階段になるのか屋外なのかの違いのみでした。
【注1】全館避難安全検証法の場合は直通階段全体の面積が計算対象になるため、厳密には建物階数が計算に影響することになります。以下、ここでは居室・階・区画単位の検証の場合とします。
ルートB2(煙高さ判定法)では建物全体の階数が避難完了時間の算定に影響する場合があります。
建物の階数が検証計算に関係する部分は
(1)階・区画単位の場合の「出口通過時間(tpass)」の加算時間算定
(2)「直通階段の流動係数(Nst)」の算定
の2ヶ所です。ただし、建物の階数【注2】が検証計算に影響するのは次のような条件になった場合となります。
【注2】この場合、「階数」とは「適用階」のことではなく建物全体の階数になります。
そのため、検証法を適用する階が一つの階、ワンフロアのみであっても計算に影響する場合があります。
■階・区画単位の場合の「出口通過時間(tpass)」の加算時間算定
階や区画単位の検証時、計算で算出した「出口通過時間(tpass)」がある数値以上【注3】になると別途、加算時間が発生します。その加算時間の数値を決定する際、建物全体の階数が影響します。
【注3】区画単位では3分、階単位では条件を満たす付室があれば6分、それ以外(避難階も含む)は3分以上の「出口通過時間(tpass)」になるとさらに時間を加算することになります。
その加算時間の算定式は次のようになっています。
加算時間=3分×max(1 , 建物の階数-2)
上記式から加算時間が発生した場合、最低でも3分、例えば5階建てなら3分×(5-2)=9分の数値を加えることになります。
今のところ実務的な経験が皆無ですが、出口通過時間への加算時間は避難完了時間(tescape)の数値に直接影響します。ルートB2では事実上、制限時間があることや、避難完了時間は短ければ短いほど有利になるため、出口通過時間への加算時間が発生しないような対策、特に4階建て以上の建物に適用する場合については必須になることが予想されます。
階・区画単位の検証では出口通過時間に加算時間が発生しないような対策が必要、特に4階建て以上では必須になることが予想されます。
■「直通階段の流動係数(Nst)」の算定
「直通階段の流動係数(Nst)」は居室及び階・区画単位の検証にあります【注4】。
【注4】避難階(避難先が屋外)の算定では「直通階段の有効流動量(Rst)」が不要になるため、Nstの算定も不要になります。
階段室にある条件【注5】を満たす付室が設置されていれば建物の階数はNstの算定に関係しません。
【注5】屋内と付室とが準耐火構造の壁若しくは不燃材料で造り、若しくは覆われた壁若しくは建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第2条第九号の二ロに規定する防火設備で令第112条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画された場合
それ以外の直通階段の場合、計算した数値に0.5の「max(建物の階数-2 ,0)」乗を乗する必要があります。
計算式としては次のようになります。
直通階段の流動係数 = Nst=計算値【注6】
【注6】「計算値」は階段の避難方向や階段幅と踊り幅の比較で算定式が異なります。
例えば4階建ての場合は0.25、5階建ての場合は0.125となり、階数があるほどNstの計算結果は小さくなってきます。Nstは「直通階段の有効流動係数Rst」を算定する際に用いる係数で 「Rst=階段の幅×Nst」と使用されます。「直通階段の有効流動係数Rst」は数値が大きいほど避難時間の短縮につながりますが、この算定式だと建物の階数が多いほど小さい数値になることが分かります【注7】。
【注7】実務的な経験がありませんので推測になりますが、ある階数以上の建物にルートB2を適用しようとすると付室の設置が必須になるものと思われます。
ルートB2では避難階以外への適用の場合、建物階数によっては付室の設置がほぼ必須となる可能性があります。
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。