■検証判定をOKにする手順
ルートB2(煙高さ判定法)では、判定をOKにする手順として、避難完了時間が制限時間を超えていないかを最初にチェックすることになると思います。避難完了時間が制限時間を超えていると煙層下端高さの計算式はZ=0mとなっており、判定がNGとなるためです。
避難完了時間が制限時間内だった場合、次は「煙層上昇温度ΔT」の数値を確認する必要があります。煙層上昇温度は180℃を超えていると、煙層下端高さの計算式はZ=0mとなり、これも判定がNGとなります。
そのため、「煙層上昇温度ΔT」が180℃を超えている場合は180℃以下となるような対策を施す必要が発生ししますが、その対策の一つにやはり避難完了時間を短くすることが含まれてきます。
■居室単位の検証の場合
居室単位の検証の「当該居室の煙層上昇温度ΔTr,room」の算定式は次のようになります。
居室避難完了時間 | 当該居室の煙層上昇温度 |
である場合 | |
である場合 |
居室避難完了時間 | 当該居室における一秒間当たりの発熱量 |
である場合 |
|
である場合 |
「Qr,room」の算定式の中に「避難完了時間tescape」が含まれていることから、「当該居室の煙層上昇温度ΔTr,room」の算定段階でも避難完了時間の影響が大きいことが見て取れるかと思います。
居室単位の検証で「当該居室の煙層上昇温度ΔTr,room」の算定は避難完了時間の数値が反映される。
■階・区画単位の検証の場合
ここでは区画単位を例として取り上げます。
区画単位の検証では「火災室隣接部分の煙層上昇温度 ΔTc,comp」と表現されており、その算定式は次のようになります。
「Qc,comp」は「当該火災室からの噴出熱気流の運搬熱量(kw)」で次の計算式から算定される数値です。
この中で「ΔTc,room」は「当該火災室の煙層上昇温度」で「隣接部分」とは異なる数値です。算定式は次のようになります。
区画避難完了時間 | 当該火災室の煙層上昇温度 |
である場合 | |
である場合 |
tm(comp)は居室単位の検証時のtm(room)とほぼ同じで室の内装から判断、あるいは算定した数値になります。火災室に隣接室がある場合は最小値を採用するものとなります。
「Qc,room」は「当該火災室における1秒間当たりの発熱量(kw)」で算定式【注1】は次のようになります。
区画避難完了時間 | 当該火災室の煙層上昇温度 |
である場合 |
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である場合 |
【注1】区画単位の検証の場合、避難開始時間で3分か5分を加算するため、tescae(comp)≦5/3分
(1.66666・・・分)になることはないものと思われます。
階単位の検証では「病院・診療所」用途の場合には加算時間がないことから、tescape≦5/3になる可能性はあります。
区画・階単位でも「煙層上昇温度」の算定では避難完了時間の影響があり、避難完了時間の数値が小さい方が有利、180℃以下にしやすいものと思われます。
ただし、居室単位の検証とは異なり、実際に「火災室隣接部分の煙層上昇温度」を180℃以下とするには室の内装仕上げ材の種類や火災室~隣接部分の開口部の性能(防火設備の有無)などの対策も必要【注2】となるようです。
【注2】ルートB1と同様、火災室より隣接部分の規模が大きければ防火設備は不要となる場合があるようです。
区画・階単位の検証でも「当該居室の煙層上昇温度」の算定は避難完了時間の影響が反映される。
内装仕上げ材の種類や火災室~隣接部分の開口部の性能(防火設備の有無)の影響も大きい。
■制限時間をクリアするだけではOKにならないことがある?
ルートB2で判定をOKにするにはまず、避難完了時間が制限時間内であることが必要です。しかし、次の段階の「煙層上昇温度ΔT」の算定でも避難完了時間の数値が反映されており、180℃以下とするには避難完了時間への対策をさらに行い、より小さい数値とする必要が出てくる場合もあるものと思われます。
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。