■居室計算における防火設備の影響【注1】
ルートB1(煙降下時間判定法)の計算の場合、防火設備は煙限界層高さ(Hlim)や煙伝播量算定に関係する要素となります。そのため、防火設備の有無はルートB1の場合、階・区画・全館単位の煙降下時間(ts)の算定には影響がありましたが、避難時間の計算や煙降下時間でも、1室のみの計算である居室単位の場合は計算に関係しませんでした。
【注1】防火設備の詳細な種類(遮煙性能や十分間防火設備など)の区別は今回省いて記載しています。
ルートB2(煙高さ判定法)は防火設備の有無が居室単位の検証に大きく影響します。
まず、避難開始時間(tstart)の算定に用いる「居室火災成長率(αroom)」の計算では隣接する室を含めて数値を算出しその中から最大値を採用するものとなっています。
その「隣接する室」にならないようにするには
「当該居室と準耐火構造の壁若しくは準不燃材料で造り、若しくは覆われた壁又は令第112条第12項に規定する十分間防火設備(以下単に「十分間防火設備」という。)で区画されたものは除く」
とされているため、隣接室から除外するには壁での区画以外に防火設備での区画も必要となります。
出口通過時間(tpass)の加算時間の判定にも防火設備の配置が影響します。当該居室等の部分(計算を行っている室とその室を通過しなければ避難できない室)が「準耐火構造の壁若しくは準不燃である場材料で造り、若しくは覆われた合壁又は十分間防火設備で区画されたもの」であれば条件が緩くなり加算時間も少なくなります。
さらに最終的な避難先が階段であり、防火設備による区画の付室が設置されているのであれば階段の流動係数(Nst)の算定で建物階数による加算を回避できます。
また、煙層下端高さ(Zroom)を計算式で算定する場合にはどの計算式を採用するかの判断や計算式の項目の中に出口通過時間や避難完了時間の項目が含まれているため、防火設備の配置によって居室の煙層下端高さ(Zroom)の計算に直接あるいは間接的にも影響することとなります。
以上のようにルートB1と異なりルートB2では防火設備の有無が計算を行っている室以外への配置だとしても居室単位の計算にも大きく影響を及ぼす可能性があります。
防火設備の有無は居室単位の検証でも影響が及ぶ。
居室の煙層下端高さの算定式
当該居室の煙層上昇温度 | 居室避難完了時間 | 居室煙層下端高さ | |
である場合 | - | ||
である場合 | である場合 | - | |
である場合 | である場合 | ||
である場合 |
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。