■開口部の面積
ルートB1(煙降下時間判定法)では開口部の「面積」は階・区画単位の検証時の煙伝播量の算定に影響します。ただし、それは開口部に防火設備が設置された場合に限られており、防火設備を有しない建具や三方枠などの開口部の煙伝播量は前室の煙発生量が持ち越される計算式となっています。そのため、防火設備が設置されていない建具・開口部は高さが一定【注1】なら幅を広げることについては検証判定に不利になることは基本的【注2】にありませんでした。
【注1】開口部の高さは「限界煙層高さHlim」の数値決定に影響します。
【注2】居室や階の出口なら幅を広げると基本的には避難時間の短縮につながります。ただし、居室出口有効幅(Beff)が絡んだ場合、一部例外が発生することがあります。
一方、ルートB2(煙高さ判定法)では防火設備でもなくても開口部の面積が計算に影響する場合があります。
■当該火災室からの噴出熱気流の質量流量
ルートB2(煙高さ判定法)では火災室~隣接室に配置された開口部は防火設備でなくても、その開口面積が計算に影響します。
開口面積は「当該火災室からの噴出熱気流の運搬熱量Qc,comp・Qf,floor」【注3】「当該火災室からの噴出熱気流の質量流量md」【注4】の算定に用います。これらの数値は最終的には「火災室隣接部分の煙層上昇温度ΔTc,comp・ΔTf,floor」の算定に必要な数値です。
【注3】「Qc,comp・Qf,floor」は火災室に排煙設備が設置されていなければ開口部面積が関係する部分は0となり、計算には影響しなくなります。
【注4】正確には「md」は「Qc,comp・Qf,floor」を算定するために必要な数値となります。
特に「当該火災室からの噴出熱気流の質量流量md」は算定される数値が小さいほど「火災室隣接部分の煙層上昇温度ΔTc,comp・ΔTf,floor」の数値を小さくすることに直結する項目になり、そのmdは開口部面積が小さいほど算定される数値も小さくなります。
「火災室隣接部分の煙層上昇温度ΔTc,comp・ΔTf,floor」は180℃以下にする必要がある他、「煙層下端位置Zcomp・Zfloor」の算定式選択に関係します。
以上のような計算の流れから火災室~隣接室に配置された開口部については面積が小さいほど「煙層下端位置Zcomp・Zfloor」の算定には有利に働くものと思われます。
■居室の出口寸法はバランスを考慮する必要がある?
居室判定がNGとなった場合、最初に施す対策の一つが出口となる扉幅を拡張になります。しかし、そのことは火災室~隣接室の開口部の面積拡大につながることから、例えその扉が防火設備でなかったとしても階・区画の計算にも影響することをルートB2の場合では考慮する必要があります。
居室の出口となる開口部の幅は防火設備でなくても階・区画単位の検証計算に影響します。
「当該火災室からの噴出熱気流の質量流量md」の算定式 Adが開口部の面積
※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。