株式会社建築工房グエル

05.排煙設備の効果

■排煙設備の効果が得られない?
ルートB1(煙降下時間判定法)でも排煙設備はその配置高さや設置する室によっては効果が限定的になることがありました。例えば、限界煙層高さ(Hlim)より下に設けられた排煙設備は排煙量が0m3/分となります。また、煙発生量の多い火災室に配置された排煙設備は煙降下時間の短縮にはあまり効果が得られないことがあります。

ルートB2(煙高さ判定法)では排煙設備を適切に配置しないとさらに効果が限定的になる、あるいはルートB1の計算では適切な位置だとしてもルートB2の計算では効果が全く得られない場合があるようです。

まず、避難完了時間(tescape)が制限時間を超えるとそもそも排煙量の計算以前にZ=0となるため、排煙設備の設置の有無自体が計算に関係しないことになります。

避難了時間(tescape)を制限時間内とし、煙層下端高さ(Z)を計算することとなっても、その計算式は避難了時間や出口通過時間などの条件によって定められたものを採用することになります。その中には「有効排煙量Ve」の項目がない計算式があります。つまり、場合によっては【注1】排煙性能をいくら上げても煙層下端高さ(Z)の算定結果には直接的には効果が得られないことになります。

【注1】「有効排煙量Ve」が計算式に組み込まれているものもあり、その場合は効果を得ることができます。

■排煙設備は間接的に影響する
直接的には影響しなくても煙層下端高さ(Z)の算定式を定める条件となる数値を計算する式の中に排煙量に関係するものがあるため、全く効果がないとも言えません。例えば階や区画単位の検証時の「当該火災室からの噴出熱気流の運搬熱量Qc,comp、Qf,floor」の計算式の中には「排煙量E」の項目があります。また、給気口の面積(Aa)の項目もあります。【注2】

例)階の当該火災室からの噴出熱気流の運搬熱量の算定式

【注2】「当該火災室からの噴出熱気流の運搬熱量」は「火災室隣接部分の煙層上昇温度ΔTc,comp、ΔTf,floor」の計算に用いる数値の一つです。なお、「火災室隣接部分の煙層上昇温度」は180℃より大きいとZ=0mとされていることから180℃以下にする必要があります。

■機械排煙にも上限がある
ルートB1では機械排煙装置を設置した場合、機械排煙の能力値を上げればそのまま排煙量の数値も大きくすることができました。その数値には計算上上限がなく、現実に存在するかどうかは別として排煙量を限りなく大きくすることも可能です。【注3】

【注3】ルートB1では防煙区画ごとの計算があり、その中での最小値を採用するため実際の効果を得るにはどの防煙区画の排煙設備も能力を大きくする必要があります。

ルートB2では機械排煙に事実上の上限が設けられました。機械排煙の計算式で算定された数値と、その室に設けられた「給気口の面積×550」とを比較し小さいものを採用するものとされています。【注4】給気口を設置できる部分というのは限定されるため、事実上、機械排煙にも上限が定められたこととなります。

【注4】パブリックコメント募集時に公開された段階では機械排煙の排煙量計算式の中に550Aa制限が組み込まれていたのですが、施行段階では告示本文の中でその表現がなされています。

ポイント
排煙設備の直接的な効力はルートB1より限定的。
機械排煙の排煙量算定に(事実上の)上限が設けられた。

■計算しなくてもZ=1.8m?
階・区画単位の検証では特例的なものがあり、ある条件【注5】を満たした付室で90m3/分の送風機が設置されていれば計算を行うことなくZ=1.8mとされています。この場合も排煙設備の設置(送風機以外)は計算には全く寄与しないものとなります。

【注5】平成28年国土交通省告示第696号に定める構造方法

※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。

 

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