株式会社建築工房グエル

06.避難経路(居室の場合)

■避難経路
ルートB2(煙高さ判定法)では避難完了時間(tescape)の算出に「避難経路ごと」に出口通過時間(tpass)の算定を行うという過程があります。
避難経路が複数ある場合、各経路への避難者数の振り分けは計算式が提示されており、次のような内容の計算となっています。

(検証対象部分の避難者数)✕(避難経路への出口幅÷検証対象部分の出口の合計幅)

この計算内容から各避難経路への人数振り分けはその経路への出口幅によって算定されることになります。

「避難経路ごと」に算定するということは一つ一つの避難経路の範囲を定める必要があります【注1】が、告示文章からの判断では次のようになるものと思われます。

【注1】現状では告示文章のみしか判断材料がありませんので以下は弊社独自の解釈となります。

■居室単位の検証の場合
居室単位の検証での避難経路は「居室の出口→直通階段(避難階は地上)」までが範囲対象となります。居室から直通階段(避難階は地上)までの経路上にある扉や廊下の幅、そして、直通階段の幅や踊り場幅も居室の避難時間算定に影響することとなります。【注2】【注3】

【注2】避難階の場合は「直通階段の有効流動量Rst」の算定は不要となります。(「建築基準法施行令の一部を改正する政令の施行に伴う避難安全検証法関係告示の制定・改正案に関する意見募集の結果について」より)
【注3】設計変更時、居室から遠く離れた部分の変更でも、その居室の計算内容もしくは検証判定に影響する場合があることになります。

一つの避難経路の範囲については居室の出口先の室が別室になれば避難経路も別の経路・・・と直感的に判断できそうですが、実際はそうとはならないようです。それは告示で示されている計算式に居室の出口先にある部分の面積Acoに合計を示す「∑」記号が付加されているため、出口先の室の面積を合計することが示唆されています。つまり、出口先の室が異なれば、即、避難経路も異なる、という判断にはならない可能性があることになります。

では、何で避難経路は区別するのか。
もう一つの候補として避難先の直通階段があります。避難に使用する階段が異なれば避難経路も異なるものとできるのか。もし、一つ一つの直通階段への到達経路が一通りしかないのなら明確に避難経路が別れているものと判断できます。しかし、複数の直通階段へ避難可能な廊下を経由するプランは特に特別なものではないことから避難先の直通階段ごとによる避難経路の区別はあまり明確ではありません。

また、階段の「有効流動係数Rs」の算定は直通階段ごとに行いその最小値を採用することになっていることから避難経路を区別する判断にはならない可能性があります。

居室からの避難が完全に別室を通過し別階段になるならば別避難経路と判断できますが、それ以外は現状では明確に区別する判断材料はないものと思われます。ただし、上記のように階段の「有効流動係数Rs」は最小値を採用することから避難先の階段ごとで避難経路を定めることでも計算結果は変わらない可能性もあります。

避難階の場合では最終的な避難先が地上であるため、階段への避難のように避難先を区別する条件がありません。そのことから避難経路は一つであるとも言えそうですが、明らかに別方向へ避難するものを一つにまとめることには抵抗があります。そのことから、「屋外への出口を有する室」が異なるのであれば別避難経路と判断することになりそうと予想されます。

※区画単位、階単位は別記載とします。


居室単位の検証でも避難先までの経路上の扉・廊下・階段幅などが計算に影響する。
告示での居室避難経路を定義した文章
当該居室及び当該居室を通らなければ避難することができない建築物の部分(以下「当該居室等」という。)の各部分から当該居室の出口(幅が60cm未満であるものを除き、当該居室から当該区画部分以外の部分等(令第百128条の6第二項に規定する当該区画部分以外の部分等をいう。以下同じ。)に通ずる主たる廊下その他の通路に通ずる出口に限る。以下同じ。)を経由して直通階段(避難階又は地上に通ずるものに限る。以下同じ。)(当該居室が避難階に存する場合にあっては地上)に至る各経路(避難の用に供するものであって、当該経路上にある各出口の幅が60cm以上であるものに限る。以下このロにおいて「避難経路」という。)ごとに・・・・・

※内容は予告無く変更する場合があります。
※記載する内容については告示の文章・計算式から建築工房グエル独自の判断になります。そのため、解説書が発行された際、その内容や国土交通省や審査機関開催の講演等で周知される解釈とは異なる見解となる可能性があります。
※告示476号(全館)については避難時間算定が他の告示によっていることなどから今回はここでは取り上げないものとします。

 

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