株式会社建築工房グエル

内装仕上げ材の影響

避難安全検証法における内装仕上げ材の影響は次のようになります。

■内装仕上げ材の種類 
避難安全検証法における内装仕上げ材の種類は平成12年建設省告示第1441号・1442号において次のように分類されています。

「令第128条の5第1項第二号に掲げる仕上げ」は「準不燃材」、「令第128条の5第1項第一号に掲げる仕上げ」は「難燃材」が該当します。
「αm」は「壁及び天井の仕上げ材の火災成長率」と呼ばれ、検証計算を行う際、室の内装仕上げ材からこの数値に変換を行って煙等発生量の算定を行うことになります。そして、この数値は小さいほど検証判定には有利になります。

■室のどの部分で判断するか?
告示では内装仕上げ材の種類を次のように判断するとあります。
火災室の壁(床面から高さが1.2メートル以下の部分を除く。)及び天井(天井がない場合にあっては屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げの種類

柱・はりについては『建築物の防火避難規定の解説』P113に次のような表現があります。
内装制限が適用される壁又は天井の部分に柱・はり等の木部が露出する場合で、柱・はり等の室内に面する部分の面積が各面の面積の10分の1を超える場合は、当該柱又ははり等の部分も壁又は天井の一部とみなして内装制限の対象として取り扱うものとする
以上から室の内装仕上げ材の種類判断は、床から1.2m以上の壁と天井(屋根)から判断します。異なる内装仕上げ材が使われている場合は性能の低いものの割合が10%以上ならば、性能の低い(αmの数値の大きい)種類のものを採用します。

■火災室・非火災室の判断に影響します。
内装仕上げ材の種類は火災室・非火災室の判断に影響する場合があります。廊下やトイレ、湯沸室(裸火非使用)、空調機械室など室の使用形態から非火災室にすることができるとされていますが、内装仕上げ材が「準不燃材」以上であることがその条件となっています。そのため、使用状況から非火災室にできる室でも内装仕上げ材が「難燃材」や「木材」である場合は火災室として扱う必要が生じますので検証計算に入る前に確認が必要になります。

■検証計算のどの部分に影響するか。
内装仕上げ材は検証計算の中では「煙等発生量Vs」の算定に大きく影響します。αmの数値が小さい仕上げ材なら煙等発生量の数値も少なくなり検証判定に有利になります。
また、居室単位の検証のみですが「出口の通過に要する時間tqueue」にも影響します。居室の出口通過時間の算定では火災の拡大による扉幅の使用状況を算定する部分があります(有効出口幅Beff)。その火災の拡大時間の算定に内装仕上げ材の種類が関係します。
そのため、居室の内装仕上げ材を変更した場合は煙降下時間tsだけでなく、居室避難時間の再計算を行う必要があります。

■具体的な影響の検証。
内装仕上げ材以外は同条件で居室計算を行った場合の影響を検証してみます。検証モデルは次のような居室とします。
■物販店舗(その他売場) 在館者密度0.5人/m2 歩行速度60m/分 
積載可燃物の発熱量480MJ/m2
■面積 900m2
■天井高さ 3500mm

上記モデルの場合、判定がNGになるのは「その他内装材」になります。
計算過程の数値では次のようになりました。

以上の検証により次のことが分かります。
□「不燃材」と「凖不燃材」の違いによる影響は小さい。
□「難燃材」と「その他内装材」の違いによる影響は大きい。

実務的には規模の小さい居室では避難時間と煙降下時間の差がそれほどないため「不燃材」と「準不燃材」の違いの影響は判定にかかわることが多いようです。一方、規模の大きい居室の場合、出口が多く確保されているのならば内装仕上げ材のランクを下げる、難燃材程度のものとすることが可能となる場合もあるようです。

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